部活動におけるパフォーマンスや安全性などを考慮して、高校に人工芝を導入するケースは増えています。最新の人工芝であれば、機能性が豊富であり、高校の部活動に大きなメリットがあるでしょう。ただし、人工芝を導入する際には、どのくらいの費用がかかるのか知っておくことは大切です。人工芝について十分に理解した上で導入を検討するべきでしょう。
本記事では高校への人工芝導入による部活動への影響から導入費用、選び方まで紹介します。高校への人工芝導入を検討している方は参考にしてください。
高校の人工芝の導入状況とは?
「令和3年度東京都児童・生徒体力・運動能力、生活・運動習慣等調査 報告書」によると、都内の公立高校の人工芝の導入率は3.0%でした。都内の公立高校の85.6%はグラウンドが土・砂であり、人工芝を導入している学校はほとんどありません。また、都内の公立高校で天然芝を導入している割合は5.4%であり、人工芝よりも導入している高校は多いです。
高校のグラウンドの大部分は現在でも土・砂といえます。人工芝を導入する費用に比べると土・砂の方が費用がかかりません。また、人工芝と比較した場合に、土・砂はメンテナンスの費用や手間もほとんどかからない点がメリットとなっています。そのため、グラウンドを土・砂にする高校が多いです。
ただし、近年は人工芝を導入する高校が増えています。たとえば、静岡県立島田工業高等学校は2008年に人工芝を導入しました。近隣への粉塵対策などを考慮した結果としてメイングラウンドの全面を人工芝にしています。
さいたま市立浦和南高等学校にも人工芝が導入されています。体育の授業だけではなく、サッカー部や陸上部、ソフトテニス部なども人工芝を利用しています。
人工芝が高校の部活動に与える影響とは?
人工芝の導入が高校の部活動に与える影響を以下にまとめました。
- 怪我の防止
- 練習可能な時間と面積を増やせる
- 公式戦と同様の環境で練習できる
- 公式戦の移動時間の短縮
人工芝の導入による高校の部活動への影響について詳しく紹介します。
怪我の防止
人工芝はクッション材が含まれているのが特徴であり、転倒した際の衝撃を和らげる効果があります。そのため、サッカーなど転倒するケースが多いスポーツをやる場合は、人工芝の導入で怪我の防止につながるのがメリットです。
また、人工芝は水はけが良くて、雨が降ったときに表面が滑りにくくなります。悪天候の中でも人工芝の上でプレーする場合は転倒しにくくなり、怪我の防止になります。
怪我のリスクを軽減することで、練習中に大きな怪我をするケースが減り、怪我で公式戦に出場できなくなる選手を減らせるでしょう。
練習可能な時間と面積を増やせる
人工芝は水はけが良いため、雨が降ったとしてもすぐに練習ができます。人工芝の場合は、雨が降ったとしても水たまりができにくくなるからです。土のグラウンドの場合は、雨が降った翌日になっても状態が悪くなって使えないケースは少なくありません。人工芝を導入することで、練習可能な時間と面積を増やせるのは大きなメリットです。
雨が多い地域や梅雨時であっても、人工芝であれば練習ができない時間を最小限に抑えられるでしょう。毎日、継続して練習できるようになり、チームの成長を促すことにつながります。
公式戦と同様の環境で練習できる
人工芝を導入することで公式戦と同様の環境で練習できるのはメリットです。たとえば、サッカーであれば公式戦のほとんどは天然芝や人工芝で行われます。しかし、練習を土のグラウンドで行う場合は、練習と公式戦の環境の違いに選手が慣れずに戸惑うケースが少なくありません。本番で力を出しきれずに後悔する選手が多くいます。
普段から人工芝の環境で練習をすることで、公式戦で普段の練習の成果を出せるようになるでしょう。
公式戦の移動時間の短縮
サッカーなど土のグラウンドでは公式戦を行えないという競技は多いです。学校が土のグラウンドの場合は、基本的に公式戦は人工芝や天然芝の開場へ移動しなければならず、選手は毎試合毎に移動を強いられることになります。学校のグラウンドを人工芝にすることで、学校で公式戦の開催ができるようになり、選手が移動する負担を軽減できるのがメリットです。移動時間が減り、普段から使用しているグラウンドで公式戦ができるようになれば、公式戦の成績向上につながります。
人工芝を導入する学校側のメリットや選び方とは?
グラウンドに人工芝を導入することで学校側にどんなメリットがあるのか、どのように人工芝を選べばいいのか紹介します。
人工芝を導入する学校側のメリット
人工芝を導入すると学校側に以下のようなメリットがあります。
- 粉塵対策が不要になる
- 生徒が怪我をするケースを減らせる
- 校内の景観が良くなる
人工芝を導入する大きなメリットは粉塵対策が不要になる点です。土のグラウンドで生じる粉塵が近隣に迷惑をかけてクレームが寄せられるケースは少なくありません。人工芝を導入することで粉塵が生じなくなります。
また、人工芝の導入により生徒が怪我をするケースを減らせる点もメリットです。土のグラウンドで練習をしていて障害が残るほどの深刻な怪我に発展するケースがあります。生徒の怪我について学校側も管理責任を問われるケースは少なくありません。人工芝を導入すれば、生徒が深刻な怪我をするリスクを軽減できます。
人工芝の導入によって、校内の景観が良くなる点もメリットです。景観を良くすることで、生徒たちの精神衛生に良い影響を与えます。また、景観の良い学校であることをアピールすることで、受験者を増やすことにもつながるでしょう。
人工芝の選び方
学校に導入する人工芝を選ぶ際には以下のポイントが大事です。
- 用途に合った人工芝を選ぶ
- 価格を比較する
- 機能性に注目する
人工芝にはさまざまな種類があります。グラウンドに導入する場合は、スポーツ用の人工芝を導入しましょう。競技場に導入されるスポーツ用の人工芝は、クッション性に優れていて、プレー性が良く、グラウンドに導入するのに最適です。
人工芝を選ぶ際には価格を比較することも意識しましょう。人工芝はさまざまな製品が存在していて、それぞれ価格は異なります。予算を踏まえた上で、予算内に収まる範囲の人工芝を選びましょう。
人工芝の機能性に注目することも大事です。防炎性や抗菌性、耐水性、起立性など人工芝にはさまざまな機能があります。用途に適した機能を持った人工芝を探しましょう。
高校で人工芝を導入する上でかかる費用とは?
高校に人工芝を導入するのにかかる費用について、初期費用とランニングコストを紹介します。
初期費用
高校のグラウンドに人工芝を導入するための費用はトータルで1億円程度かかります。ただし、人工芝の種類やグレード、面積などにより費用は大きく異なるため注意しましょう。そのため、事前に見積りをもらい、どのくらいの費用がかかるのか細かな内訳を確認しておくことが大切です。
たとえば、川崎市の橘高等学校がグラウンドを人工芝にした際にかかった費用は約1億3,500万円でした。人工芝の導入のために初期費用として1億円を超える費用がかかることを考慮しておきましょう。
人工芝を導入するための初期費用は天然芝よりも高いです。ただし、工期は人工芝の方が圧倒的に短く、2〜8週間で施工が完了するとされています。
ランニングコスト
人工芝を維持していくためには日々の管理と補修が必要です。維持管理のために必要な主な作業を以下にまとめました。
- ゴムチップをほぐして均一にする
- ゴミや枯れ葉などを取り除く
- 痛みの激しい箇所を部分補修する
年間の維持管理にかかるコストは、管理費が100万円程度、補修コストは100万〜2,000万円程度とされています。
また、人工芝の劣化が進んだ場合は貼り直しが必要です。一般的には5〜10年程度で貼り直しを検討した方が良いとされています。人工芝を貼り直す場合は、初期費用と同様に1億円程度のコストがかかるでしょう。
長期的に見れば、人工芝の導入で初期費用が1億円かかり、毎年ランニングコストが1,000万円程度かかり、10年に1度は貼り直しに1億円費用が発生すると考えられます。
まとめ
高校に人工芝を導入すれば、怪我を防止できるのが大きなメリットです。他にも、天候に影響を受けずに練習しやすくなり、公式戦と同環境で練習できることで成績の向上にもつながります。学校にとっても、人工芝の導入が粉塵対策や景観を良くすることにつながり、メリットが多いです。
ただし、人工芝の導入には、初期費用だけでも1億円かかり、毎年ランニングコストとして1,000万円近くの費用が発生します。高校に人工芝を導入するかどうかは慎重に検討しましょう。